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【書評】老後資金は「増やす前に小さくする」|50代のお金の本を読んで

書評、50代からのお金

「老後資金は2,000万円」という数字を見るたびに、自分にそれだけ用意できるのか、正直気になっていました。今回、浅田里花さんの『50代からの「確実な」お金の貯め方、増やし方教えてください』(主婦の友社)を読んで、その不安とどう向き合えばいいのか、少し分かった気がします。

この本が教えてくれるのは、投資で一気に老後資金を増やす方法ではなくて、世間で語られる平均額に振り回されず、自分の収入、支出、年金、資産を確認して、身の丈に合った生活をつくることの大切さなのです。


老後2,000万円という数字より、自分の家計

本書によると、老後資金2,000万円という数字は、一定の条件にもとづく平均的な試算にすぎないそうです。

必要なお金は、受け取れる年金、毎月の生活費、住まい、家族構成、何歳まで働くかによって変わります。大切なのは世間の数字ではなく、「自分の場合はいくら必要なのか」を確認することだと本書は書いていました。

そのために、今後の収入、年金見込額、退職金、預貯金、住宅ローン、生活費、将来予定している大きな支出などを書き出します。年表にすると、いつごろ資金が不足しそうなのかが見えてくるそうです。

不足が分かっても、悲観するだけではありません。働く期間を延ばす、支出を減らす、住まいや保険を見直すなど、いくつかの方法を組み合わせて対処する、というのが本書の考え方でした。


投資より先にやる、固定費のダウンサイズ

私がこの本に共感したのは、投資より先に家計を整えるという考え方です。

私自身も、老後に備える基本は固定費を削り、暮らしをコンパクトにすることだと考えています。

固定費は一度下げられれば、効果が毎月続きます。格安SIMのほか、電気・ガスの契約、車にかかる費用なども定期的に見直す必要があります。

もちろん、何でも我慢すればいいとは思いません。満足度の低い支出や、よく分からないまま払い続けている費用を減らして、自分にとって大切なことにお金を使える状態をつくるのが目的です。

生命保険も同じです。小さな出費まですべて保険で補うのではなくて、自分の貯蓄では責任を取れないほど大きな損失にだけ保険をかける、というのが私の基本的な考え方です。

本書でも、公的な健康保険、高額療養費、障害年金、遺族年金、雇用保険を確認してから民間保険を考える大切さが説明されていました。公的保障を知らないまま不安だけで余計な生命保険に入ると、毎月の固定費を増やすことにもなります。


現金と運用の分け方

私は、余裕資金はNISAなどを軸に運用しながら、ある程度は現金でも持っておく必要があると考えています。

急な入院や修理が起きたとき、すぐ使える現金がなければ、相場が下がっている時期に投資商品を売らなければならないかもしれません。少なくとも急な出費に対応できる現金を確保して、それを超える分を運用に回す、という順番です。

本書が勧めているのも、生活設計を無視した投資ではありませんでした。短期的な利益を狙わず、長期・積立・分散を基本にして、理解できない商品には手を出さないという考え方です。

確実に儲かる商品があるわけではなく、自分が負えるリスクの範囲を決めて続けることが大切なんだと思います。


本の情報と現在の制度の違い(NISA・iDeCo)

本書は2022年に刊行されているため、制度については現在と異なる部分があります。

本書に登場する「つみたてNISA」は2023年で新規買付を終了し、2024年から新しいNISAが始まりました。現在は「つみたて投資枠」と「成長投資枠」を併用でき、年間投資枠は合計360万円、非課税保有限度額は合計1,800万円になっています。非課税保有期間も無期限です。詳しくは金融庁のNISA特設サイトで確認できます。

iDeCoも制度変更があります。2026年9月現在は基本的に65歳未満が加入対象ですが、2026年12月1日から、一定の条件を満たす人について加入可能年齢と拠出限度額が引き上げられる予定です。厚生労働省の制度改正案内で最新条件を確認する必要があります。

年金額、税金、社会保険の金額についても、書籍掲載時の数字をそのまま現在の数字として使うことはできないので注意が必要です。


この本を読んで

この本を読んで感じたのは、私が考えてきたお金との付き合い方と、著者の考えがよく似ているということです。

固定費を下げて、暮らしをコンパクトにする。余計な保険には入らない。急な支出に対応できる現金を確保して、残った余裕資金をNISAなどで長期運用する。

50代から一気に資産を増やそうとするのではなくて、出ていくお金を整えて、無理のない範囲で運用を続ける。地味に見えますが、それが老後の不安を小さくする、いちばん現実的な方法だと今は思っています。


よくある質問

Q. 老後資金2,000万円という数字は、誰にでも当てはまりますか?

A. 本書によると、この数字はある条件にもとづく平均的な試算にすぎず、必要な金額は年金額や生活費、住まいによって人それぞれ違うそうです。まず自分の年間収支と年金見込額を書き出すことから始めるとよさそうです。

Q. 投資より先にやることはありますか?

A. 私は本書を読んで、固定費を見直して暮らしをコンパクトにすることが先だと感じました。効果が毎月続くうえ、余計な保険を見直すだけでも家計はかなり変わります。

Q. 本に出てくるNISAやiDeCoの情報は今も正しいですか?

A. 本書は2022年刊行のため、制度の数字は変わっています。現在のNISAは年間360万円・生涯1,800万円が非課税保有限度額で、期間も無期限です。iDeCoも2026年12月から対象年齢などが変わる予定なので、公式サイトで確認することをおすすめします。


参考資料(2026年9月16日確認)