ふとした会話で、あの人の名前が出てこない。
買い物に行くつもりで部屋に入ったのに、何を取りに来たのか一瞬わからなくなる。
50代になると、こんな場面が前より増えたと感じる人は少なくないでしょう。
そこで急に認知症という言葉が頭をよぎることもあると思います。
ただ、その一回だけで決めつける必要はありません。
認知症は、記憶や判断力などの認知機能が低下し、社会生活に支障が出ている状態を指します。
物忘れがあることと、認知症であることは同じではありません。
まずは怖がりすぎず、忘れ方と毎日の暮らしに起きている変化を分けて行きましょう。
名前が出ないことと、出来事を忘れることは違う
年齢を重ねると、言葉や人の名前をすぐに取り出せないことがあります。
朝食を食べたことは覚えているのに、何を食べたかは思い出せない。
このように、体験の一部が抜けるのは加齢による物忘れで見られる特徴です。
本人が忘れたことに気づいている点も重要です。
一方で注意したいのは、出来事全体の記憶が抜け落ちるような場合です。
食事をした事実そのものが残っていない。
同じ話や質問を何度も繰り返す。
約束をしたこと自体を覚えていない。
認知症による物忘れでは、このような現象がみられることがあります。
とはいえ、自覚があるかないかだけで線を引くのは良くないです。
認知症の初期には、本人が変化に気づくこともあるそうです。
大事なのは、思い出せなかったことを後から思い出せるか、手帳やスマートフォンの予定を見れば行動を思い出せるかの違いがあります。
言葉が喉まで出かかっているのに出てこない、という経験だけで認知症とはいえません。
気になる出来事があった日や、そのときの状況を少しメモしておくと、変化の有無を落ち着いて振り返れます。
受診を考える目安は、生活に支障が出ているかどうか
認知症を考えるとき、物忘れの回数だけを数えても意味は余りないかもしれません。
以前は問題なくできていた家事や仕事、お金の管理、予定の調整が難しくなっていないか。
ここが大きなポイントです。
料理の手順を何度も間違えたり、買い物をしなくなる。
計算や片付けのミスが目立って、話のつじつまが合わない。
こうした行動があるなら、一度相談を考えていいかもしれません。
ほかにも、慣れた道で迷ったり、約束の日時や場所を取り違える。
趣味に急に関心を示さなくなったり、以前より怒りっぽくなったり、といった変化は見過ごさないほうがいいそうです。
自分が気づくより、家族や同僚のほうが先に気づくこともあるそうです。
50代は仕事の責任が重くなり、親の介護や子どもの進学など、考えることが増えやすい時期です。
忘れ物した自分を責めるより、最近眠れているか、落ち込んでいないか、生活のリズムが乱れていないかにも目を向けてみてください。
認知症に似た状態は、うつやせん妄、甲状腺機能低下症などでも起こるそうです。
原因を自分だけで決めつけないことも大切です。
相談は、積極的に
気になる変化が続くなら、最初の相談先はかかりつけ医でいいと思います。
近くのもの忘れ外来や地域包括支援センターがあれば利用する方法もあります。
もの忘れがあるからといって、すぐに認知症と決まるわけではないので、必要以上に心配しないでおきましょう。
自覚的な物忘れ、軽度認知障害、認知症ではない別の原因などを区別するために、早めに自分の状態を知ることも大切です。
受診の前に、忘れ方の具体例、飲んでいる薬、家族が気づいた変化を整理しておくと、医師に伝えやすくなります。可能なら家族や信頼できる人に同席してもらうのもよいでしょう。
これからの暮らしを守るために確かめてみる。
そう考えると、相談へのハードルは少し下がるかもしれません。
早く事情がわかれば、治療が必要な病気を見つけられることもありますし、仕事や家族との向き合い方を整える時間も持てます。
9月は、自分と身近な人を見直す機会に
厚生労働省は9月を認知症月間、9月21日を認知症の日としています。
50代の物忘れを必要以上に怖がる必要もありませんが、いつもと違うことが続き、毎日の生活で困りごとが増えているなら、年齢のせいにして悩まないことです。
名前が出ない日があるからといって慌てない。
できていたことが難しくなっているなら、誰かに相談する。
これらを注意するだけでも、早く自分の変化に気づくことが出来るかもしれません。
参考資料
[1]: https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou_kouhou/gyouji_kaigi/2026/nenkan.html 厚生労働省 令和8年度年間行事予定
[2]: https://www.gov-online.go.jp/article/202501/entry-7013.html 政府広報オンライン 知っておきたい認知症の基本
[3]: https://www.ncgg.go.jp/hospital/shinryo/senmon/monowasure.html 国立長寿医療研究センター もの忘れセンター外来
