はじめに:
「年金だけで老後を暮らしていけるのか?」 ──これは多くの人が抱える不安のひとつです。
ニュースでは「年金は減る」「破綻する」といった言葉が飛び交い、 将来に対する不安は増すばかり。でも、焦る前にまずは、 “制度の中身”と“自分にできる備え”をやさしく整理してみましょう。
1. 公的年金のしくみをやさしくおさらい
日本の年金制度は「2階建て構造」になっています。
- 1階部分:国民年金(基礎年金) …全国民が対象40年きっちり納めた場合(月額 約6万5千円)
- 2階部分:厚生年金 …会社員・公務員が対象(収入に応じて支給額が増える)
そのため、自営業の方やフリーランスは1階部分のみ、 会社員や元公務員は2階建てで支給されるという仕組みです。
現在のモデルケースでは──
- 夫婦2人(厚生年金あり)で 月約20万円前後
- 単身世帯(国民年金のみ)で 月6~7万円程度
このような受給額が一般的と言われています。
2. 知っておきたい「年金の選択肢」
今、50代の私たちが年金を受け取るのは、あと10年から15年ほど先のこと。 そのとき、自分がどのような働き方をしているか、健康状態はどうか── それによって「繰り上げ」「定時」「繰り下げ」の選択が、大きな意味を持ってきます。
焦らず、でも着実に、いまから制度を知り、心の準備をしておくことが、 後悔しない選択につながっていくはずです。
🔸「得か損か?」──損益分岐点という考え方
年金の受け取り時期を考えるとき、 「どっちが得か?」という損益分岐点を気にする方も多いでしょう。
一般的には──
- 繰り上げ受給は、77歳より早く亡くなれば得
- 繰り下げ受給は、82〜84歳を超えて長生きすれば得
つまり、男性の平均寿命(約81歳)を考えると、 男性には繰り上げ受給の方が向いているケースもある一方、 女性の平均寿命(約87歳)を考えると、繰り下げ受給で得になる可能性が高いとも言えます。
もちろん、これはあくまで数字上の話。 実際には健康状態や収入状況など、自分のライフスタイルに合わせて判断することが何より大切です。
🔹 繰り上げ・繰り下げ受給
- 年金は原則65歳から支給ですが、60歳~75歳の間で自由に調整できます。
- 早く受け取れば減額、遅らせれば増額され、 75歳からの受給なら最大84%増しになります。
🔹 障害年金や遺族年金
- 万が一の事故や病気で働けなくなったときの障害年金
- 配偶者を亡くした場合の遺族年金
これらも“公的年金制度の一部”です。 「何かあったときの支え」が年金には含まれているのです。
3. 「年金+α」で安心感をつくる
🔹 働きながら年金を受け取るという選択
最近では、「年金を受け取りながら働く」ことを選ぶ人も増えています。 65歳以降でも健康であれば、パートや自営業、在宅ワークなどを通じて収入を得ることが可能です。
- 年金と仕事の組み合わせで、生活にゆとりができる
- 社会とのつながりが保たれ、心も身体も健やかに
- 年金の一部停止制度(在職老齢年金)も、2022年に見直され、月収が多くない限り大きな影響はなし
📌 収入がいくらまでなら減額されない?
65歳以上の人が年金を受け取りながら働く場合、 「在職老齢年金制度」により、一部年金が減額されることがあります。
- 月収(給与+年金)の合計が 47万円 を超えると、超えた分の**50%**が年金から一時的に減額されます。
- つまり、月収が47万円以下であれば減額はありません。
たとえば:
- 給与30万円+年金20万円 = 合計50万円 → 3万円超過 → 年金が1万5千円減額
なお、減額された年金は将来的に加算される可能性もありますので、 「損をする」というわけではありません。
「完全に引退する」のではなく、 **「自分のペースで働きながら、年金を活かす」**という選択肢が、これからのスタンダードになるかもしれません。
🔹 「年金+α」の考え方
「年金だけでは暮らせない」と言われる理由は、 支出が多様化している現代のライフスタイルにあります。
だからこそ、年金にすべてを頼らない工夫が必要です。
- 働ける間に少しずつでも貯蓄をしておく
- 健康を維持して、できる範囲で長く働く
- 固定費を見直し、無理のない暮らしを整える
- 必要に応じて公的支援や制度を活用する
これらを「年金+α」として考えておけば、 将来に対する不安は大きく和らぎます。
おわりに:「制度に頼る」から「制度を活かす」へ
年金制度は、日本に暮らす私たちの土台として用意された仕組みです。 でも、その制度だけで暮らしを支えようとすると、不安になるのも当然です。
だからこそ大切なのは、 **「年金を軸にしながら、自分の人生をどう設計するか」**という視点。
制度に振り回されるのではなく、 制度を味方にしながら、自分に合った安心の形を描いていきましょう。
次回は、老後資金が十分に用意できない場合でも、 **「生涯現役で楽しく働き続ける生き方」**についてお話していきます。
🕊 「年金は、あなたの人生を支える柱のひとつ。主役は、あなた自身です」